カブリIPMUの大栗真宗特任助教と信州大学、奈良高専、国立天文台の研究者を中心とする研究グループは、およそ100億光年彼方にあるクェーサー (銀河中心核) の姿を2つの別の角度から観測することに成功しました。通常の深宇宙の観測においては、対象となる天体があまりに遠くにあるために、その姿を右から見たり、左から見たりすることができません。本研究では、「重力レンズ効果」を利用して、クェーサーからのガスの流出を別の角度から見ることに成功しました。 これにより、謎に包まれていた小さな銀河中心核から吹き出すガス流には、角度による濃さの違いがあることが確認できました。このガス流は、ゆくゆくは銀河スケールにまで広がり、銀河全体の進化にも影響を及ぼすことになります。今回の成果は、すみれプロジェクトで用いている、すばる望遠鏡の大集光力とすぐれた分光能力が活かされた観測と言えます。

この研究成果は、米国の天文学専門誌『アストロノミカル・ジャーナル』に掲載されました (Misawa et al. 2013, The Astronomical Journal, 145, 48) 。また本研究は、理化学研究所・基礎科学特別研究員制度、科学研究費補助金・若手 B (23740148, 23740161)、信州大学若手研究者萌芽研究支援事業、the FIRST program “Subaru Measurements of Images and Redshifts (SuMIRe)”、World Premier International Research Center Initiative (WPI Initiative), MEXT, Japan によるサポートを受けています。

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